コロナは人材確保のチャンス!
移住や雇用に新しい価値観もたらす

(牧山)お二方の業種は折に触れて後継者難や人材不足が取りざたされてもいます。一方で「コロナを機に地方移住を」という動きも出てきています。コロナ後を見据え、持続可能なご商売を続けていくにあたり、どのような戦略展開を描いておられますか。

(金泉)今回の対談にあたって岡部さんの資料を拝見しました。テレワークできることがうらやましいです。ネットで検索してみても「農業のテレワーク」は出てこない。農業でいえば“現場”という意味で「テレワーク」はできない。しかしできない中でどんな材料があるかいろいろ考えてみました。
当社ではコロナとは関係なく、2019年から「無人ロボットトラクター実証実験」(農研機構・北海道大学・富山県)に協力しています。また、2019年から環境制御型ハウスでのイチゴ栽培にも取り組んでいます。温度などをリモート操作できるので、イギリス出張中も遠隔管理できました。こういったものが加速する可能性はあると思います。
さらに大きな“農業”というくくりでみると「アグリワーケーション」というコンセプトがあります。地方に移住してリモートワークで仕事し、家庭菜園レベルから農業をやる。リモートワーケーションを活かし、地方移住を進めることもできると思います。「半農半X」という言葉をご存知ですか。1990年代ぐらいに塩見直紀さんが提唱したコンセプトですが、半農半X的な感じでアグリワーケーションや農業に携わるスタイルを、このコロナが後押ししてくれないか期待しています。

土木・建設業との共通点でいえば、冬の仕事がない、土をいじらなきゃいけない、地元に根ざしたエッセンシャルワークというところでしょうか。岡部さんは土木・建設事業に加えて、夢のある遊具事業をされている。うちもコメ作りで地域の農地保全をメインとしながらリモートで海外販売しています。面白さを出しながら利益も上げて、うまく回ればいいなと思っています。

(岡部)農業と建設業は、業種は違いますが割と近いところにある。現場では人の手が必要で、機材・重機もいります。過去に公共事業が減った時、「建設業の新分野進出」ということで、行政機関が農業への後押しをして、一部の方が取り組んでいたこともありました。
コロナによる影響の共通点は、やはり“巣ごもり需要”ということですね。住宅街の中に子供の遊び場を作りたいという問い合わせが全国で急増しています。海外でも案件がいくつもあるのですが、リモートで打ち合わせが可能になったことで、渡航費がいらなくなったというのも同じです。

(牧山)コロナでリモートがこれだけ普及すると、初期投資のハードルが下がり、中小企業にとっては大きなチャンスでもあると思います。岡部さんは、もともと土木・建設事業を中心にされていて、遊具の分野は多角化の一環とも言えますね。

(岡部)事業リスク分散をかなり意識しました。北陸新幹線開業前は新幹線以外にも道路網整備でかなり国、県で公共投資をしていました。県内でいえば能越自動車道という大きな事業が新幹線開業後に終わり、それに伴う売上減が億レベルで発生するということもわかっていました。当社ではそうなる4〜5年前に事業を見直しました。遊具事業の分野に注目し、営業のやり方を大きく変え、ネット上で情報発信しました。その結果、問い合わせが増え、HPのアクセス数は月200〜300件だったのが、月3000〜5000件に、売り上げも2倍以上になりました。今も常にリスク分散というところで、民間事業を引っ張るための事業づくりを意識してやっています。
あと、今チャンスだなと思うのは雇用の分野です。建設業界は人材確保が難しく、若手になかなか入ってきてもらえない。高齢化による除雪のオペレーター不足も深刻で、将来この除雪体制が維持できるのか不安があります。先ほど金泉さんから、冬場は農業が閑散期という話もありましたので、コラボレーショできないか、除雪のオペレーター不足を補えないかと、さまざまな可能性を感じました。

(金泉)実は冬場の仕事として、ネギやニンジンに一生懸命取り組んでいた時期もあったのですが、その年によって降雪量が変わり、安定しないのが嫌で…。今は夏場の米作りに集中したいと考えています。例えば、冬の間に作付け計画や地主との調整、田んぼのメンテナンスなどを一生懸命やるようにしました。また、雪が降っても仕事ができるイチゴのハウス栽培も冬場の収入を安定させるために取り組んでいます。昔の農家の方は一生懸命に働いて、冬場はゆっくり休んで湯治に行ってたんですよ。そんな感じの方がブラックでなくていいのかなと(笑)。

(岡部)そうですね。人手不足でいえば、農業も建設業もICT化が非常に進みつつあります。ICT化することによって今までのように熟練技術がなくてもやっていける。人手を抑えてできることにうまく取り組んでいくべきですね。

(牧山)このコロナで雇用も流動化しています。人材をどう確保するのか。岡部さんでいうと遊具事業での多角化。金泉さんは冬場のイチゴ栽培にみられる季節間での労働平準化など、非常に工夫をされています。これもコロナだけがきっかけというわけではないですが、加速化させるきっかけになっていますね。

(岡部)人材確保には魅力アップが非常に大事です。遊具分野は社内でも非常にイメージの良い事業になっています。ここ数年、県外から遊具事業をやりたいという学生さんが集まり、さらにコロナ以降、問い合わせがどんどん増え、4月には県外から大卒5人が入社します。採用面では非常にチャンスです。また、首都圏で働いている方で田舎に移住したい方が増えています。リモート勤務ができるようになれば、富山県に移住して、月に1〜2回本社の東京に行くということもできます。富山に移住した方に対して、月1~2回の旅費を支援する仕組みがあると、呼び込むのに有効だと思います。人を採るには地方は今がチャンスですね。

(牧山)一時期、建設業も農業も「3K」ということがよく言われました。最近はイメージが少し変わってきているかと思います。一方で、近年は“ブラック企業”という言葉も耳にします。今まで一般にイメージされていた働き方の本質自体が変わりつつあり、「富山での暮らし・働き方」が若い方にも受け入れられやすくなっているのではないかと思います。

(金泉)うちにも東京から農業をやりたいとやってきた人がいます。農業には体を動かす仕事の素晴らしさもあって、晩御飯は美味しいし、すぐ寝つけるし、いい部分がたくさんあります。コロナ禍の都会生活でストレスを感じるのであれば、地方にきてもらうチャンスですし、そのためにも半農半Xやアグリワーケーションができる環境になればいいなと思います。

(牧山)コロナで価値観やイメージが変わりつつある。東京の人口も久しぶりに社会増減で減に転じたという話もありますが、富山を含めてようやく地方の良さが少し際立ってきた。しかしそれが地方間の競争につながってきています。

(金泉)地方で魅力的な仕事をどう作っていくか。岡部さんもうちもですが、そのためには「ものを売る、作る力」がないといけない。しかもそれが楽しくないとダメなんでしょうね。

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