アフターコロナ見据え
夢に向かって食品加工業に挑む

(牧山)
今後、新型コロナウイルスが収束しても、以前のような消費行動には完全には戻らないとすれば、違う道筋を考えていかねばならないと思います。これから冬に向け、美浪さんは忘新年会シーズン、野口さんはカニ漁と大変な時期を迎えられると思いますが、前向きに今の状況をチャンスと捉え、この試練を乗り越えたコロナ後に、それぞれのお仕事についてどんな展開をしていきたいと考えておられますか?

(美浪)
さまざまなものが変わっていく中で、飲食店のあり方も変わらないといけません。団体よりも個人にシフトしていく時代になると思います。私の夢は目の前のお客様一人ひとりを大切にできるレストランを作ることです。今はどうやってその夢をアップデートさせていくか、道筋をいろいろと考えています。収入はガクッと減り、新しいチャレンジはなかなかしづらい状況です。だからまずはその安定性を作らないと夢には届かない。その安定をどのように作るかが今の目の前の課題です。

(美浪)
夏に東京に料理の出張に行き、富山の商品力と自分の料理が通用したことは自信になりました。シチュエーションが変わってもお客様に届けること、お店に来なくても安定して届けられる環境を作ることができればと思っています。例えばお酒と一緒に販売したり、冷凍の食材をいろいろ使用したりといった、食品加工業を来年始めたいと思っています。これまで富山に来てくれたお客さんや、これから来てくれるたくさんのお客さんをターゲットに「富山みやげ」という土俵で、自分の商品を立ち上げてみたい。現在のお店は継続しつつ、コロナ禍に左右されずに店を安定させ、従業員を守り、そして自分の夢も叶えるという道筋のために、食品加工業でチャレンジする。その先に自分の理想とするレストランができたらいいなと思っています。もともとはコロナ禍に関係なく自分の夢だったのですが、こういう状況になって背中を押され、チャレンジしなくてはならない状況になったのは良かったと思っています。

多職種メンバーで情報発信。
しろえび観光船をスタート

(野口)
昔は「漁師は黙って魚を獲っていればいい。余計なことはしないで自分の技術を磨き、本業を大事にしなさい」と言われていました。自分の父親もそうでした。今でも本業は大事ですが、コロナが収束しても社会はそんなに変わらないとすれば、漁業者がやらなければいけないことは、「こんな良いものをこんなふうに獲っているのだよ」と自分たちで情報発信していくことだと思います。今までも多少はそのような取り組みをしていたのですが、漁業者だけの取組みではたかが知れています。そこで、新湊の漁業者が集まって、まず、「富山湾しろえび倶楽部」というものを作りました。そして、自分たちの力が及ばないところはいろんな所を巻き込もうと、「しろえびに関わった全ての人たち」に声を掛けました。今では、メンバーには漁業関係者の他、行政や民間企業、地元飲食店、宿泊施設、一般消費者の方が加わっています。コロナで自分たちから動けないとすれば、消費者の方にサポートしてもらう一つの方法として、今の時代はSNSが有効だと思います。そこで漁業者としてどのような目新しさが提供できるか考えた結果が、自分たちが漁をしている姿を実際にみてもらうことでした。

こうした発想で、今年7月から「白えび漁観光船」を始めました。漁をしているところに船で行って実際に漁の現場を見てもらい、そこで獲れたてのシロエビを食べてもらう。獲れたてのシロエビは朝日に照らすと透き通って見えるんですよ(笑)。そういう食べるだけではわからない体験をしてもらい、シロエビに興味を持ってもらった上で、体験した方々から情報発信をしてもらう。シロエビのブランド力を高めるには、雑誌やテレビで取り上げられることもありますが、今の時代は個人の方にどれだけ取り上げていただくかが大事だと思っています。

シロエビの魚価を上げるためにもこれらの取り組みは必要ですが、いろんな方と繋がれるというのが重要です。シロエビを通して地域貢献もできればと思っています。例えばシロエビを観光船で見てもらうのに合わせて、遠方からのお客さんの場合は、宿泊施設や地元の飲食店を紹介したり、食事を提供したりしています。みんなをセットにして、射水市に来て楽しんでもらえれば嬉しいです。シロエビを大きな市場に出して味わってもらうことも大事ですが、ちょっと偉そうですけれど、「食べに来い!(笑)」と。食べに来て美味しかったら、東京や大阪に戻ってまたシロエビを食べようということになります。そんなふうにブランド力が上がっていけばいいなと思います。「白えび漁観光船」を体験した人にSNSで紹介してもらえた点では、いいスタートというか、いい契機になったと思います。

(牧山)
テイクアウトやSNS投稿などを通じて、いろいろな形で人が寄り付いてくれば、そうした人を介していろんなところに経済が波及していく。おそらくこれまでもあったとは思いますが、そうした繋がりがこれまではそんなにはっきり見えなかったような気がします。生産者と料理人、地元の消費者、宿泊施設などがタッグを組み、地域の良さをもっと外にアピールしていける、そんな新たな繋がりがコロナを契機に県内のいろんなところにできているのかなと思います。

まだまだコロナ禍で大変なことの方が多いですが、お話をうかがって、将来に向けた希望をもって取り組んでいらっしゃるのだなあと実感しました。近年、「持続可能性」や「SDGs」といった言葉をよく耳にします。コロナ禍の下にあっても、自然や資源、家族や従業員の方々など、かけがえのないものを守りながら次世代に繋いでいくには、お話にあった「地域での横のつながり」が、これからの鍵になるのではないかと思いました。

今日は貴重なお話をいただきありがとうございました。

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