富山県庁 広報課 課長 
牧山貴英 以下(牧山)
富山県では感染拡大防止と社会経済活動を両立させ、県民一丸となって、新型コロナウイルスに負けない、元気な富山県を創っていく取組み「MAKE TOYAMA STYLE」を進めています。

今回は、創業100年以上を数え、魚津駅前の玄関口として、食を通して魚津の魅力を伝えてきた『海風亭』の料理長、美浪 呂哉さんと、富山県漁業協同組合青年部連合会長として、漁業生産の場である海を守るための活動や、富山県の魚のPR活動など、魚食普及に尽力されている野口 和宏さんのお二人にお話をお聞きします。

(牧山)
今年は新型コロナウイルスの影響を受け、大変辛い一年だったと思います。まずは一年を振り返り、新型コロナウイルスがお二人のお仕事などに及ぼした影響と変化、また、それを乗り越えるために工夫されたことなどについてお聞かせ下さい。

水産資源・シロエビを守り、
値崩れを防ぐため、休漁を決意

シロエビ漁業者、富山県漁業協同組合青年部連合会長
野口 和宏氏(射水市) 以下(野口)

新型コロナウイルスが問題になり始めた3月は、ちょうど底曳カニ漁のシーズンでした。そのころはカニや魚の市場価格もそれほど下がらなかったのに、4月になって全国的に感染拡大してからは、潮が引くように下落していきました。国の緊急事態宣言が出され、仲間内から「このままシロエビ漁を続けてもよいのだろうか」という話があがりました。例えば定置網の場合だと、網がある以上、そこに行って水揚げしなければならない。しかし私たちの場合は、その都度、船の上から網を落として漁をするため、シロエビを獲らないでおこうと思ったら、漁に出なければ、シロエビを海にそのままにしておけます。休業要請で加工品の需要が激減し、飲食店も全く動かない状態でシロエビを獲っても市場価格が下がるうえ、シロエビの命を粗末にすることにもなります。それならば、あえて漁を休み、海を休ませようということになりました。こうして新湊漁協はシロエビ漁に出ないと決め、GW前後の2週間ぐらい休業しました。本当は私たちの生活がかかっているし、乗組員もいますから不安だったのですが、そうした方が長い目で見て自分たちのためにもよいだろうと判断しました。

(牧山)
新型コロナウイルスが発生する前の主な出荷先は首都圏だったのですか?

(野口)
基本的に私たちのシロエビは漁港の競りに参加される仲買さんに買っていただくのですが、話をしていたら、観光関連では全然モノが動かないし、地場も当然動いていないと。シロエビは他の魚と違って冷凍するのが前提です。仲買さんがたくさんの在庫を持つことは、彼らのリスクとなり、結果的に値崩れを起こします。仲買さんあっての我々の仕事ですので、5月中旬ぐらいまで休業しました。その後は漁にでましたが、漁獲量は減らしました。コロナ禍への対応だけが理由ではなく、持続可能な漁業を目指した水産資源保護の意味もあります。昔は網を1日4回、日曜日以外は毎日あげていましたが、今年のほとんどは1日1回だけで取りやめ、水曜日は基本的に漁に出ないようにしていました。今年は水揚げ自体は好調だったのですが、買っていただくお店の方や仲買さんが本来の営業ができないのに、供給しすぎるのはどうかと考え、漁獲量を抑制したわけです。捌けないのに仲買さんに在庫を持っていただくのは、仲買さんにとっても好ましくないし、結果的に私たちも困る。漁を抑制したので、新湊漁港のシロエビの水揚げ高は結局、去年の60%ぐらいに減りました。

(牧山)
思い返すと、確か5月ぐらいには県内のスーパーの店頭にも普段見ないような魚が並んでいましたね。

(野口)
ここ数年、射水市でもスーパーでシロエビを売っているところはあまりなかったのですが、今年は結構並びました。シロエビは今まで市場価格が下落した時でさえも、スーパーで取り扱うような食材ではなかったのです。今年はコロナ禍だからこそスーパーに置いてもらい、地元の方に食べていただける機会が増えたといえます。シロエビに限らず、高級飲食店で扱われるような高級魚が県内スーパーでも販売されていました。

複数の飲食店が結集。
合同でテイクアウト開始

(牧山)
美浪さんの状況はいかがでしたか。

海風亭料理長
美浪 呂哉氏(魚津市) 以下(美浪)

私のところは3月ぐらいから徐々に影響が出始めました。3月、4月は歓送迎会シーズンですが、全てキャンセルになりました。さらにステイホームとなって、普段来ていただいていたお客さんもなかなか来店できなくなりました。飲食店が動かなければ生産者さんの食材も動かない状況になる。出口である私たちがなんとかお客様に届けることをしないといけないと思い、テイクアウトを始めました。最初は個々のお店でやっていたのですが、飲食店の皆さんが集まって合同で販売しようということになりました。最初は私のお店の前で始めましたが、思った以上に反響があり、ホテル・グランミラージュさんの広い場所を借りて、毎週末開催しました。

お店の営業の方は、8月にも新型コロナウイルスが再流行し、今もまた再拡大してきています※ので、昨年までと比べると明らかにお客様の数は減少しています。忘年会シーズンには毎年たくさんの企業や事業者の皆さんにご利用いただいていたのですが、今年は全くないです。GO TOイートやGO TO トラベルキャンペーンでちょっとお客さんが戻ってきたところに、また感染拡大で減ってきたという印象です。
(※取材時点は、令和2年11月末)