インバウンド中心から、国内客へシフト
観光のあるべき姿見つめ直す

(牧山)
山川さんはどうでしょうか?

株式会社コラレアルチザンジャパン
代表取締役 山川智嗣 以下(山川)
新型コロナウイルスの影響を感じ始めたのは、恐らく業界の中ではかなり早かったと思います。最初に影響を感じたのは1月末ぐらい、春節のお客様のキャンセルが非常に多くなった頃です。日本ではまだあまり発症していなくて、それこそ武漢で騒がれていたぐらいの時でした。その春節の時に中国政府が「中国人はこれ以上外に出るな」と言って国境が閉ざされてしまった。その時点から「これはちょっとまずいな」と思っているうちに、どんどん売り上げが下がっていったのは覚えています。5月は1カ月間休業していたのですが、その前月の4月は前年比90%減になりました。インバウンド率も、もともと毎年50〜60%ぐらいあったのが、ゼロになってしまい、かなりのダメージがありました。

しかし逆に、観光のことを改めて見つめ直す、いいきっかけになったと思っています。最近ではマイクロツーリズムという言葉が一般化されてきましたが、「今後は日本のお客様に対しても目を向けて、しっかりとしたサービスを提供していかなければならないよね」ということを社内で話ができたのが非常に良かったと思います。以前まではインバウンドという言葉を新聞で見ない日はないぐらい出回っていました。しかしその一方で、京都や高山などの都市では、オーバーツーリズムと呼ばれるような、平穏な日常生活が送れないまま観光ばかりを推し進めてしまった施策の綻びが出始めてきていたところでした。一歩立ち止まって、今後の日本の観光はどうあるべきかを考える、いいきっかけになったのかなと思います。

一棟貸スタイルが功奏。接触を伴わない
セルフチェックインとルームサービスを強化

(山川)
今後のアフターコロナ時代に向けて、どのような観光を提供できるのかを考えたときに、私たちは古民家を活用した、全てが個室スタイル、一棟貸スタイルで、町全体がホテルというようなコンセプトで運営していたので、幸か不幸か非常に3密を避けられる体制になっていました。その特色を生かして、セルフチェックインシステムを導入しました。最近では、県外から富山県に来たいが、県外ナンバーの車で来ると周りの目も気になるから来にくいというご心配もあるかもしれません。そういった方たちに、ストレスなく滞在を楽しんでいただけるような工夫として、お客様自身にセルフで部屋にチェックインしていただくことを考えました。全ての部屋にPINコードが設定してあるので、事前に番号をお知らせして自分で入室していただけるシステムです。もともとアプリを自社開発してあったのですが、それをアップデートし、セルフチェックインシステムやルームサービスを強化しました。旅先でお酒を飲みたいという要望もたくさんあるのですが、今のご時世、簡単に居酒屋などに出歩いて人との接触機会を増やしてしまうと、それはそれで町としてもリスクが高いということもあります。それでしたら、お酒を提供できるようなルームサービスをしようと思いました。こういったサービスは、タワー型のホテルのサービスとして一般的だと思うのですが、まちに分散しているお部屋までルームサービスで持っていくというのはなかなか珍しい。今は地域の酒蔵さんからお酒を取り寄せて提供させていただいています。そのほか、部屋内のミニバーを全て無料にして、よりお部屋の中のステイを楽しんでいただけるような仕組みを作っています。変わっていく現状を打破するためにはどうすればいいのか。日々更新しながら進み続けるしかないと思っています。

(牧山)
インバウンド。今(2020年9月現在)はほとんど外国からの出入りがないということで、もともと利用者の約60%が外国の方だったという状況から、今はいろいろ工夫され、国内需要へのシフトが起きていると思いますが、今の国内需要についてどのような手応えがありますか。

ワーケーションプランと
県民、近隣県割引で客数増

(山川)
これからのニューノーマルの流行スタイルとして、観光や働き方の新たな形として休暇を楽しみながらテレワークで働く「ワーケーション」を推進したいと、菅義偉官房長官(当時)が7月ぐらいに発言されたのですが、実はそれ以前、4月7日の緊急事態宣言が出る前に、うちでは早めにスイッチしてワーケーションのプランを打ち出しており、その頃からワーケーション需要は少なからずあると感じていました。独自に近隣県からお越しの方向けに割引をしたところ、すごく反応がありました。今でも石川県、岐阜県、新潟県など近隣の県からのお客様が増えてきたと感じています。

同時に富山県が行った「地元で泊まろう!県民割引キャンペーン」施策も、非常に助かっています。いろいろなメディアでうちの宿を取り上げていただいたので、それを見た県内の方が「いつか泊まりにきたいとずっと思っていたけれども、なかなか来られなかった」「毎年海外旅行に行くのだけど、今年は行けないから、県内で面白い所がないか探していた」ということで選んでいただけるケースが非常に多いです。実際に県民キャンペーンでお泊まりになったお客様が、その2週間後に「すごく良かったからもう1回来ました」と定額料金で泊まっていただいたケースもあり、昨年では考えられなかった効果が出てきています。

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